前回は「どこを切り取る? 人物撮影時のショットの知識」を投稿しましたが、今回は「何を入れる? 撮影時のフレーミングの知識」について取り上げます。良い写真が撮れないのはフルサイズじゃないから? マニュアルでまだ撮れないから? と思っている方はこのフレーミングの知識を持っているだけで飛躍的にレベルが上がります。APS-Cでもスマホでも、さらには使い捨てカメラだって良い写真が撮れちゃうんです。人物、建築、風景など、どんなときでもフレーミングに気を配って撮影してみましょう。またよく混合されるものとして「構図」がありますが、フレーミングと構図の違いは下記にあると考えています。
- フレーミング:画面内に何を入れ、何を入れないのかを決めること
- 構図:フレーミングで決めた要素をどう配置するかを決めること
順番としてはある程度フレーミングを決めた後に構図を考えると良いです。そうするとおのずと構図も決まってきます。まずはフレーミングとはなんぞやというところからお話しします。
何を主役にするかが一番大事
フレーミングで一番重要なことは、何を主題にして、その主題をどう見せたいのかです。もっと極端にいうと何を入れ、何と入れないのか。例として下のような写真はいかがでしょうか。
初心者が撮りがちなフレーミングですが、いまいち印象に残らない写真です。これだと「花」が撮りたかったのか「道」が撮りたかったのかがわからず、何が主題かはっきりしません。もう少し印象に残る写真にするには余計なものをバッサリ切ってみましょう。例えば「道」以外をフレームの外に追い出した写真が下です。
どうでしょうか。これだと主題が「道」であることが伝わり、印象に残るのではないでしょうか。放射線構図も用いているので視線も道の奥に誘導されますね。
次は最初の写真から花だけを切り取った写真です。
主題が「花」であることが伝わってきて見る人を迷わせません。これがフレーミングです。よく写真は「引き算」だと言われますが、フレーム内に何でも入れようとするのではなく、どこを切り取るかが重要なんですね。またF値を低くして背景をボカすことも主題を引き立たせる上でとても効果的です。背景がボケればボケるほど主題が浮かび上がってきます。
もう一つ例を挙げます。例えばこの写真はいかがでしょうか。
海沿いの町の風景に小さく配置された少年達に視線が集中するようにできています。これは主題が「少年達」で副題が「海」や「建物」ととらえることもできると思います。もし主題の少年達だけが画面にフレーミングされていたとしたらこのようなストーリー性や空気感までは表現できなかったと思います。副題を効果的に入れると、より主題を引き立たせることもできるんです。小さな主題をどこにどう配置させるのが効果的なのかは、三分割法や黄金螺旋などの「構図」の知識があると良いと思いますが、構図に関してはまた別の機会で詳しくまとめたいと思います。
全体像を入れない
人間の脳は被写体の一部だけ見ても全体を想像できるように出来ています。つまり、被写体の全部を見せる必要はないということ。できるだけ「引き算」をしようとすると、実は人物の頭は切ってしまっても良かったりします。その方が主題をより絞り込むことができるので、よりストレートに表現することができます。
また、風景や建築などを撮るときでも広角が一番いいとは限りません。敢えて見せたい部分だけを切り取ることで、よりダイナミックさを表現することができます。
前を開けるか、後ろを開けるか
人物の前側と後ろ側どちらを空けるかによっても見え方の印象が変わります。これもフレーミングをする上で知っておくと、自分の狙った印象にすることができます。
真ん中に配置する
こちらは良く使われると思いますが、被写体を真ん中に配置させると被写体の「現在」を感じさせることができます。
前を空ける
前を空けると被写体の見ている方向を意識させることができます。「ポジティブ」や「未来」を感じさせるような表現に使われます。
後ろを空ける
後ろを空けると「ネガティブ」や「過去」を感じさせるような印象を与えます。栄養ドリンクなどの広告では疲れた人をこういったフレーミングで表現することもありますね。
アングル
アングルは一般的にもよく使われると思いますが、被写体を上、下、アイレベルのどこから撮るかといったお話です。
水平アングル
被写体と同じアイレベルのアングルです。対話しているときと同じアングルなので、ドラマのシーンなどではよく使われます。被写体が立っているときは自分も立って撮り、被写体が座っているときは自分も座って撮ると、アイレベルが同じなので臨場感が増します。
ハイアングル
被写体を見下ろすフレーミングです。弱い立場の雰囲気が出ます。子どもや犬猫などの場合は、顔が大きく体が小さく見えるのでかわいらしく効果的です。風景写真では高いところ俯瞰した写真になるので、普段の目線とは違うダイナミックさを表現することが可能です。
ローアングル
下から見上げるフレーミングです。立った状態での撮影だと単調な写真ばかりになってしまうので、ローアングルにするだけで新鮮な写真になります。人物を撮影するときは足が長く見えます。また、花や子ども、動物など、普段目線の下にある被写体をさらにローアングルでとると新鮮で効果的な印象を与えられます。建物やビルなどであればより高さが伝わるので迫力を出すことができます。
左右の角度をつける
建築物の撮影の場合、真正面からとるか斜めから撮るかでガラリとイメージを変えるので、表現したいフレーミングを探してみましょう。
真正面から撮影する
敢えてパースをつけずに真正面から撮影してみるとどう感じるでしょうか。真正面からのフレーミングだと「静」の印象を表現できます。また威厳や風格も感じさせることが可能です。平面的な写真となりやすいですが、ローアングルにして地面を入れると近影も取り込めるので奥行きを感じさせることもできます。
角度をつけて撮影する
視線が手前から奥に引き込まれるように感じます。動きがでるのでダイナミックな写真にすることができます。視線の先にさらに人を入れたりすると主題が「人」になりますね。手すりが「人」を引き立たせる役割を担ったりもします。
まとめ
以上、フレーミングのお話でした。フレーミングって被写体が人物であれ建築物であれとても重要な要素です。まずは主題をどうとらえるかを踏まえた上でいろいろ試してみましょう。APS-Cなどの画角が狭めのカメラだとフレーミングの能力が鍛えられるのでオススメです。また、フレーミングの際に同時に意識すると良いのが「構図」なので、構図の話も次回してみたいと思います。
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