今回は第172回芥川賞受賞作の「ゲーテはすべてを言った」です。
この「ゲーテはすべてを言った」という本。私はこの作者である鈴木結生さんについて何も知らず、ただ芥川賞をとったらしいという理由だけで購入していました。読んでいる最中はなんか有名な人たちの引用がたくさん出てくる! 正直1〜2割の人しかわからないけど(ゲーテも正直名前しか聞いたことない)、この作者は大学教授か何かかな。すごい知識量だと感心しきりでした。
どんな人が書いているんだろうと調べてみたらなんと23歳。正直、目が点です。どれだけの本を読めばこんな本が書けるんだろう。自分は今35歳ですが、自分なんかよりもずっと大人びた文章で博学。あと20年生きてもこのような文章は書けないだろうなぁ(白目)。
冒頭(端書き)のURLはどこに飛ぶのか
さて、こんなすごい本の感想は私には難しいので、今回はこの本にあるある仕掛けについて知らない人のためにお教えします。それは、物語冒頭の「端書き」という章にあるURLについてです。
基本的な触り部分だけご説明すると、この「ゲーテはすべてを言った」の主人公は博把統一という大学教授です。物語は一貫してこの博把統一が語り手として書かれていますが、唯一冒頭の「端書き」だけは、彼の義理の息子が語り手となっています。「ゲーテは全てを言った」は、義理の息子が博把統一について書いた小説という体裁であり、「端書き」はこの小説を書くことになった経緯を義理の息子が説明する章となっています。
さて、ここ「端書き」の一部にこんな文章があります。
書き終わった作品を仙台の実家に送付したところ、統一からの返信には、「楽しく読んだ」と好意的で仔細な感想が述べられた上で、「私が私じゃないこと以外は全部本当の話だった」とあった。私はそれを本作への最大の御墨付と受け取り、こうして世に出す運びとした。そのため、本作を手に取る人の中には当然、博把統一の著作のファンも数多くおられることと思うが、そういった方々については、統一自身が既に発表している「未発見のゲーテ書簡について」(https://www.hakugei.site/backnumber/123)も併せて読まれることを強く勧める。本作の学術的記述に関し誤りがあれば、それはすべて作者の責任である。
なんか小説の中にURLが書かれているなんて見たことがないので、違和感を感じます。これ小説だよなと思うのですが、私は一旦ここはスルーして続きを読みました。
読了後、そういえばURL書かれてなかったっけ? と思って早速PCにURLを打ち込んでみたら、なんと手の凝ったことか、主人公の博把統一が書いたとされるWEBページが表示されました。小説の文字をいちいち打ち込むのが面倒臭い方のためにここにリンクを貼りましたので、是非ご覧ください。
→https://www.hakugei.site/backnumber/123/
どうやらこれは博把統一自身が書いている文章のようです。本編の方は義理の息子が書いている一方、こちらは博把統一本人の目線で書かれているのが面白い。まあ結局文章のクセそのものは作者の鈴木結生さんの特徴ある文体なので、結局書いているのは同じ人であることわかっちゃうんですけどね。
「ゲーテはすべてを言った」は、ゲーテの専門家である博把統一が、偶然自分の知らないゲーテの名言を発見してしまい、それを本当にゲーテが言ったのか、さまざまな方法で調べていくという小説です。このWEBページは当時の博把統一がどのようにしてこの発信元にたどり着くかが論文調でかかれています。正直かなり難しい文章なので、ちゃんと理解できる人はどのくらいいるのだろうと思いますが。
以上、鈴木結生の小説「ゲーテはすべてを言った」の冒頭のURLはどこに飛ぶのか、でした。単純に本として面白いので、まだ読んだことない方は是非読んでみてください。
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